燕がやってきた。
毎朝、頭上をスイと飛ぶ。
あの飛び方はかっこいい。
一瞬の白い影線を残して
風を切って飛んで行く。
白と黒のツートンカラーの
背中の羽は藍黒色で腹部は白。
喉と額は柑子色でスタイルもよい。
普段は50キロ位で走るが、
餌を獲るときはなんと200キロ。
安住の地を持たない渡り鳥。
小さな窪んだ不安そうな目が
どこかの誰かに似ている。
子供の頃、土間の上に巣を作っ
ていたが、懐こうとしなかった。
それでも毎年来てくれていた。
白秋に「燕」の詩がある
燕は翔(か)ける、居留地の
柑子色(こうじいろ)なる窓玻璃(まどがらす)
ななめに高く。—ほつほつと
霧に湿らふ火のにほひ。
白秋の目には、このように写るのか。
かっこいいなんて決して言わない。
一度会って、一杯飲みながら話して
みたかった一人だ。