あなたの好きな曲、好きな本、好きな映画を
一つ選べと言われたらどれにしますか?

私は、由紀さおりの「夜明けのスキャット」、
伊藤左千夫の「野菊の墓」、
マリオプーゾの「ゴッド・ファーザー」、
を選びます。

夜明けのスキャットは、こころ静かになりますね。
なぜ静かなのかは、示かしません。

野菊の墓は、心が洗われ素直になれます。
この本は、何度読んでも飽きません。

ゴッド・ファーザーは、男の世界を感じます。
あの優しい青年が、ドンへと変貌するさまは男です。

「夜明けのスキャット」、「野菊の墓」に「ゴッド・ファーザー」。
この三つは私以外は誰も知らない。
つまり、「隠れ切支丹」のようなものです。

この中の、男について少しだけ——。

「男らしさ」について、石原慎太郎と三島由紀夫の対談があり、
二人がそれぞれ紙に書いて出し合った。

石原は、「自己犠牲。ただし、いっさいの説明をともなわぬ」と記し、
三島は「自己犠牲」と書いた。

三島は、「よし、これでいい」とうなずいてみせた。
この「自己犠牲」、が男なのである。

ここで言う男らしさとは、沈黙のうちに行われた、
他人への献身のための、自己犠牲を指している。

言葉はいらない。他人のために、すべての意味で愛する
もののために、黙って自らの生命をすら捧げることの出来
るものと石原は言っている。『男の世界より』

ゴッド・ファーザーは、この男の世界を感じることの
出来る映画の一つだ。

マフィアの映画だが、ここでのアル・パチーノの
役柄が、男として妙に共感を誘う。

不合理を内包してのあの表情は、まさに影を含む顔だ。
ボスとしてのもの静かな振る舞いにも魅かれてしまう。

ドアが閉じられる場面で映画は終わるが、あの部屋で
マフィアのボスとしての行動が始まる。

私の好きな「夜明けのスキャット」「野菊の墓」と、
全く結びつきそうもない「ゴッド・ファーザー」。
オレは、一体どんな性格なのだろうね。